東日本大震災被災地支援報告 vol.17 2012年9月(新たな試みで前へ)
震災から2度目の夏が終わろうとしています。家族や親族を亡くした方、家や財産を亡くした方、職場を失なった方、被災者の方々はどのような思いでこの夏を過ごされたのでしょうか。
被災地を訪れると、もはやあの悲惨な現状を目の当たりにすることはできません。むしろ、道路などが整備されて、ここに新たに街ができるのだろうかと錯覚します。
しかし、明らかに何かが違うと感じます。人気がなく、いわゆる生活感が感じられません。そこには喪失感が充満しているのです。被災した人たちは、あまりの復興の遅さに生活再建の見通しが立たず、長年生活していた地を離れるようになりました。
当会が支援しているKさんが住む浜は、壊滅的な被害を受けた浜の一つです。かつてここは鯨漁で栄えたところですが、いまは瓦礫が撤去された街中を歩いていても、人に会うことは希です。
そのKさんのところでは、現在、ご主人と息子さん、インドネシアから来た出稼ぎの青年、3人が定置網の修理を行なっています。定置網があれば、いくらかの生計の足しになるからです。10月にはワカメの種付けも始まります。Kさんたち浜の婦人部も頑張っています。新たに弁当屋を始めました。
6人のグループが4人ずつ交代で出勤、調理して、多い時には100個ほど販売します。ですが、それでも人件費まで捻出するのは至難であるとのこと。
もとより、Kさんは体があまり丈夫ではないことが心配でした。訪問する度に顔色や肌艶がすぐれないのが気になっていました。心労もあるのでしょう、今は季節の変わり目で体がだるく、このところ頭痛に悩んでいると語っていました。
Kさんが住む浜を見下ろす高台に我々が支援している中学校があります。先日、M教諭から当会で寄贈した国語辞典20冊は、生徒達に頻繁に使われていると、嬉しい報告を頂きました。
月末には、当会主催の第2回の職業人による講演会が予定されています。故郷の浜が津波で壊滅して、生徒達の身近にあった漁業という職業に将来の希望が見えなくなりました。そのため、教諭陣から当団体に、皆さんの様々な職業を紹介してもらい、生徒達に将来の夢や希望を与えてもらえませんでしょうか、という強い要望があり、これに応えての支援です。
当日は、当団体から職業人講師が赴き、生徒達に仕事の内容や楽しさを講演する予定です。きっと生徒達は、目を輝かせながら講師の話に聞き入ることでしょう。
支援への感謝
この中学校から石巻への帰り道に、もう一人の支援者Aさんが住んでいる浜があります。この浜も壊滅的な被害を受け、Aさんのご主人も仕事を失ったことで生活のめどがたたない状況でした。私たちが以前訪問したときも、ご主人の元気ない姿が印象的でした。
息子さんのM君は、当時、我々が支援する中学の3年生でした。成績が優秀でしたが、このような状況では自分は進学できないと、卒業したらすぐに働く覚悟でいたそうです。
そのM君も私達の支援を受け、念願の高校に進学して勉学とサッカーの部活に励んでいます。先日、Mさんから手紙を頂きました。
それによると、心配していたご主人もアナゴ漁を始め、少し元気になってきたとのこと。
「Mも疲れからか少し風邪をひきましたが、夏休みも3日だけ休んだだけで、相変わらず勉強と部活にがんばっています。これもすべて皆様の支援のお陰です」と感謝の言葉が添えられていました。
M君の将来も楽しみです。
いろんなことを学んで、いずれはこの地の復興に欠かせない立派な人材になることを期待しています。